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出会いと原点(おにゃお)
今週は、思い出に残る出会いがあった。医療政策学の池上直己教授と、バイオリニストの五嶋みどりさんにお会いする機会を得た。私にとって、池上教授は研究の原点、五嶋みどりさんは趣味の原点である。
池上教授の御著書『日本の医療―統制とバランス感覚』を読んだのは、まだ教養学部にいた頃だ。日本の医療制度を、成立の歴史的経緯や、展望・課題について、判りやすく解説してある良書だった。この一冊がきっかけとなり、医療政策、医療経営に漠然と興味を抱き始めた。就職後も、医療政策に対する関心が衰えることはなかった。 火曜日、池上教授は日本の予防医療および介護保険について、特別講義をされた。その前日、ヘルスケア・マネジメント専攻の同級生yakと一緒に、個別にお話を伺うことができた。P4P (Pay for Performance)の日本における導入、レセプトの情報管理、政管健保の財政問題について、直截な御意見を伺うことが出来た。さらに、博士課程での研究に関するアドバイスまで頂戴することが出来た。 金曜日、ブリテンのバイオリン協奏曲を聴きに、Kimmel Centerへ。ソリストの五嶋みどりさんがステージに入ってくると、全団員が笑顔で迎えた。ガラ・コンサートでAnne Sophie Mutterが入場した際、団員の表情に緊張が走ったのとは好対照だった。コンサート・マスター、アシスタント・コンサート・マスターとにこやかに握手するフレンドリーな彼女が、演奏者全員に歓迎されているのが伝わってきた。 オーケストラとの緊迫した駆け引きが続く難曲も、彼女の手にかかると、驚くほど素直に聴衆に届く。第2楽章の長大なカデンツァを弾ききる集中力には、ただ脱帽するのみ。13歳の時、タングルウッド音楽祭で、E線を2度も切りながら演奏を完遂し、共演指揮者バーンスタインが跪いて敬意を示した、というエピソードを思い出した。 休憩時間中、ホールの入口に、五嶋みどりさんの姿があった。思い切って、話しかけてみた。「五嶋さんに憧れて、バイオリンを始めました。今年で23年になります」。彼女は「頑張って続けてくださいね」と笑顔で握手をしてくれた。小さくて、柔らかく温かい右手だった。「ありがとうございます」と言うのがやっとだった。 世の中には、素晴らしい才能を持った人々がいる。私は足許にも及ばないが、できることを毎日少しずつ、積み重ねていこう。渡米して2ヵ月半。体調を崩し、目標を見失いかけていたとき、自分の原点に立ち返ることができた。今週の二つの出会いに、心から感謝したいと思う。 ちなみに、Kimmel CenterのStudent Rush Ticketは僅か$8。今日、もう一度、聴きに行こうかな…。
by whartonjapan09
| 2007-10-06 20:24
| おにゃお
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