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Wharton MBA (Class of 2009) 有志による「刺激」を共有する場
by whartonjapan09


約束(おにゃお)

11月22日は、いい夫婦の日。

9年前の今日、祖父が逝った。
愛妻家だった祖父は、わざわざこの日を選んで、天に召されたようだった。

祖父は、小さな医院を、地域医療・介護を担う病院網に育てた。
亡くなる直前まで、朝7時前には病院に出かけて、診療と経営をこなした。
昭和一桁世代を絵に描いたような、ストイックなプロフェッショナルであり続けた。

そんな祖父が生前、ぽつりと呟いたことがあった。

『アメリカのビジネス・スクールの病院経営コースに、1週間だけで良いから留学したい』

70歳の誕生日を目前にしての一言に、当時、大学生だった私は驚いた。

『1週間でも大パパがいないと、病院は大変よ』

そう応えると、祖父は、そうか、と言って笑った。

『それでは、おにゃおさんが、僕の代わりに勉強して来てくれるかな』

笑っていたが、祖父の目は真剣だった。

『うん』

祖父は嬉しそうに頷いた。

『でも、アメリカで勉強する前に、大パパにいろいろと教えてもらわないといけないわ』

『そうか、そのうちね』

そのうち、は、ついぞ巡って来ないまま、祖父は病に倒れた。

病状を黙ったまま、祖母とハワイへ最後の旅行をした直後だった。
東京にいる孫娘には、学業と就職活動に支障が出るだろうから、
いよいよという時まで、病状を伝えるなと、
祖父は家族に厳命していたと、後になって聞いた。

東京から長崎へ。枕元に駆けつけると、苦しい息の下で、おかえり、と祖父は言った。
祖父は病室に入るのを拒否したため、執務室に運び込まれたベッドに横たわっていた。
その手には、院内報が握られていた。

『少しは休んで』

初孫にたしなめられた祖父は、無理に微笑んだ。
それから20分後、祖父の意識は遠のいていった。

そして、以前に交わした、他愛ない約束だけが、重く、残った。

今日、祖父の遺影に問いかける。

あなたの学びたかったことは、本当は何だったのでしょう。
私は今、それを学んでいるのでしょうか。
そして、ちゃんと、学んだことを、活かしていけるのでしょうか。
by whartonjapan09 | 2008-11-23 08:11 | おにゃお
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