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米国医療事情と保険会社の戦略 (オッサン)

NYCにある子会社でのインターンも、残すところあと1週間を切りました。

昨日は、アクチュアリー部門と会計部門を統括するSVP兼CFOの首切り劇がありました。解雇の通告は、大体、木曜の夕方というケースが多いらしいです。
直後に、米国人のCOOから "Organizational Announcement" と題したメールが全職員宛に発信され、"〇〇 has left the company to pursue other opportunities. We thank him for his years of service to the organization and wish him well. His last day with the Company was Thursday, July 24th." との内容が告げられました。最終出社日は…って、今日言って今日かよ!みたいな。
ただ、そのCFOも一見フツーに、他の職員と別れの挨拶などを交わしていました。
親会社が日本企業ということもあり、「ローカル職員の平均勤続年数は、一般のアメリカの会社に比べて随分長いよなぁ」なんて印象を持っていたところだったので、少し驚きましたが、こういう手段を実際に行使し得るところがやっぱりアメリカの会社だと感心させられました。

さて、現在この会社は、過渡期に差し掛かっています。
これまでは、規模の拡大を最優先に、価格競争にもある程度踏み込んで契約獲得を進めてきたところ、直近2-3年は急速にボトム・ラインが悪化して、プライシング・ポリシーの引き締めを行ったのです。そうすると、販売にも即座に影響が出始めていて、セールスサイドからの不満が噴出しています。

a0106603_7402383.jpg近年、米国全体では、物価上昇自体が2-4%程度で推移する中、医療費支出は毎年10%を越える水準で上昇し続けています。当然、保険会社にとっても保険金支出は増加の一途を辿っています。
そうなると、今度はそれが保険料アップという形に転嫁され、企業(保険契約者)の財政を圧迫します。スターバックスはコーヒー豆の仕入れよりも多くの費用を従業員向け医療保険に支払っている、なんて話もあるくらい、企業にとって医療保険料削減は急務です。

ここで注釈しますが、アメリカには一部(国民の約25%)の低所得者層・高齢者層を対象とした制度(Medicaid, Medicare)以外、公的な医療保険は存在しません。その代わりを担っているのが、民間の保険会社が提供する「団体医療保険」というもので、企業が契約者となり、従業員の福利厚生(べネフィット)の一環として保険料を負担しています。
国民の6割強が雇用主より医療保険を提供されている、逆に言うと、それなりの企業で働いている人でないと医療保険が与えられないため、2割弱の人たちが「無保険者」という状況になっています。個人で医療保険に入っている人は1割にも満たず、従って米国の保険マーケットは「企業(法人)」がメインで、リーテイル主体の日本とは大違いです。

さて、そうなると企業は、①保険料を下げるために、保険会社を競わせてダンピングさせるか、②保障内容を削減(通院や手術に際して保険金給付が低額/従業員の自己負担が高額になるプランに変更)するか になります。

①のケース:しわ寄せは保険会社にいき、経費削減(この国のリストラはマジですごい)が事務・サービスの悪化につながる→結局は、医療制度全体の利便性の著しい低下となり、深刻な問題が発生。
アメリカで生活したことのある人なら、この国の一般的なサービスのレベルの低さには、怒りを通り越してあきらめの境地だと思いますが、そのアメリカで、保険会社はサービスの劣悪な産業として悪名高いと言われているわけですから、どれだけ悲惨かは推して知るべしです。

②のケース:しわ寄せは従業員にいき、医療保険は持っていても、まともに病院にも行けない状態が発生。
本当に危機的な状態になるまで病院に行かない→ERに担ぎ込まれる→救急措置で尋常でないお金がかかる(さすがに放置はしない)→保険会社は一部しか負担しないし、患者は到底払えない→病院はお金を払える人に負担をシフトしていく(医療費高騰につながる) と、これが今のアメリカが抱える悪循環の一つです。

なお、この①②の状況を克明に?描いて話題となったのが、かのマイケル・ムーア監督の「SiCKO(シッコ)」という映画です。日本でも昨夏に小規模映画館で公開されました。この映画はマジ怖いです。例によってムーア監督独特の「誇張」はあると思いますが、あらすじを読むだけでも面白いので、是非どうぞ↓。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=6362

で、前置きが長くなりましたが、うちの会社が今、何をやろうとしているかと言うと、価格競争に踏み込むのではなく(小さい会社なので、そもそも「規模の利益」には勝てない)、顧客サービスの向上により、差別化を図っていこうという戦略です。
MBAの授業でもプライシングの話はミクロ経済、マーケティング、ストラテジーといろいろな場面で出てきますが、一般的な論調としては「価格競争に踏み入るべきではない」というものでした。しかし、現実社会はなかなかそう簡単にはいかない。みんな「囚人のジレンマ」に陥るわけです。(逆に、現実社会からの学び・示唆として、MBAでは「価格を下げちゃいかん」と強調しているのでしょうね。)

ここで難しいのは、保険会社が提供する「顧客サービス」とは、保険利用者(従業員)にとって役に立つ・価値のあるものが多く、保険契約者(企業)にとっては直接的なメリットを感じてもらいにくいということです(あえて言うなら、従業員の満足度向上を通じた生産性・企業イメージのアップといったところでしょうか)。しかし、アメリカの企業でそこまで中長期で会社のことを考えている人は非常に少なく(CEOでさえ目先の株価上昇を最優先にする)、意思決定権を持つHRの担当者は、とにかく自分の在任期間だけは目先の保険料を抑えたいと思うわけです。やはり、保険料のプライオリティーは相当高いと言えます。

しかしながら、今の会社が目指している方向性には個人的には大賛成。幸いなことに、マーケットでは「事務・サービスの質が高い会社」としての認知は得つつあること(一般に、製造業のおかげで "日本=高品質" とのイメージは伝わりやすいらしい)と、保険業界の現状があまりに酷すぎるため(シッコ参照)、かなり際立った差別化要因となる可能性があることから、今の強みをよりレベルアップしていこうという社内プロジェクトが進行しつつあります。

日本の親会社にも、こうした身軽さと組織の一体感を見習って欲しいと思う反面、こちらには零細企業特有の資金不足・マンパワー不足という深刻な悩みがあり、会社のマネジメントは本当に難しいと感じるのでした。
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by whartonjapan09 | 2008-07-26 08:19 | オッサン
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