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Wharton MBA (Class of 2009) 有志による「刺激」を共有する場
by whartonjapan09


MAGEC(Shu)

自分はMAGECの授業が好きだ。

MAGECとは、Managerial Economicsの略称で、不完全競争市場、ゲーム理論、オークション、期待効用、情報の非対称性・外部効果等、大学でのミクロ経済学にあたる。

Welcome to Managerial Economics, one of the first core courses in the MBA sequence at the Wharton School. The mission of this course is to develop your ability to think about managerial problems from an economic perspective. As such, this is not a course in economic theory; instead, we think of it as a tutorial in applying fundamental economic concepts to complex realities.

自分も大学の教養時代に、ミクロ経済学をとって勉強をしたはずなのだが、正直何も覚えていない。需要曲線と供給曲線の交点がどうとか、MC=MRとか、公式だけ覚えてテストを受け、それが何を意味するか、自分が生きていく上で何の役に立つのか、全く理解することはなかった。

自分が今MGECが好きな理由は二つ。

一つは、就職をして事業投資の業務に携わり、事業投資会社の経営戦略を行う中で、顧客の需要、商品やサービスのコスト構造及び価格設定、予算や事業計画、他社買収における企業価値の算定等を経験し、経営戦略の観点から、ミクロ経済に対してより実践的な興味を抱いたため。

そしてもう一つは、このMAGECを教えるWhite教授の存在である。

9月初めの授業のこと。学校の教材配布課が混んでいたこともあり教材を持たず、最初の授業では授業方針の説明とそれからミクロ経済の公式の解説くらいをするのだろうと簡単な気持ちでクラスに入った。確かに授業方針の簡単な説明はあったが、「君たちはもう大人なんだから、Concert Rule、それ以上僕が言うことはないだろう。」の一言で、「じゃあ、ビッドを始めよう。」との言葉が続いた。

最初の授業の内容は、二部料金制(two-part tariff system)で、教材での問題例として、ある会社を金額Aで購入し、自分で当会社の料金設定を行い、当年度のリターンBを計算するというものがあった。White教授の言う「ビッド」とは、実際に学生が自分の財布からAドルを教授に支払い、その後クラス全体でリターンを計算した上で、教授がその学生にリターンBドルを支払うというものであった。クラスで教授と学生が金のやりとりをしてとの批判があるのではと思ったが、White教授は「ここはBusiness Schoolなんだ」とさらっと述べて進んだ。クラスのほとんどの学生が事前に問題を解いてきており、そのうち多くがビッドに参加して実際に数ドルの利益を上げていた。

White教授はリターンの計算方法や二部料金制の意味するところを解説しながら、クラスの中を歩き回った。White教授が特徴的なのは、歩き回り語りかけながら、一人ひとりの学生の目を凝視していくこと。「僕は今解説をしているが、君は今僕の話を聞いて何を考えているんだい?」White教授の目はそう語りかけているように思えた。そのWhite教授の目線にまっすぐに答えられない自分が悔しかった。

その後、MAGECの授業で、Oligopoly(寡占市場)における2社の供給量を設定する問題例があった。クラスの大半は、模範解答例を用意したが、自分と同じコーホートであるMiaさんは共同して寡占市場においてカルテルを発生させた場合の回答例を用意した。このクラスでもWhite教授はビッドを行った。模範解答例では学生の利益はゼロとなったが、自分とMiaさんは、教授から80ドル近くを巻き上げることに成功した。何もお金を得たことが嬉しいわけではない。やられたという顔をしながら、カルテル発生の場合について楽しそうにクラスに語りかけるWhite教授の姿を見るのが嬉しかった。

これが自分のWhite教授の目線に対する回答であり、直接的な言葉を必要としないCommunicateのつもりである。White教授がクラスを笑わせていたジョークは正直分からなかったが、授業後の個人的な会話では、更に一歩上の回答例の解説を受け、感銘を受けた。

Tacit Mutual Understanding。自分は正直Communication能力が低いため、友人であれ先輩であれ、これが達成できたときに幸福を感じる。相手の考えを理解し、相手が喜ぶことを考え、それに応えていくこと。さらに、声を張り上げるのではなく、さらりと何気なしにされると、「えっ?!」と思わず心を打たれる。

MAGEC(Shu)_a0106603_1501975.jpg

by whartonjapan09 | 2007-09-16 01:57 | Shu
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